2005/11/12

11月12日 土曜日 やってきたぜ、石垣

昨日は座安さんにごちそうになって夜の那覇・国際通りを楽しんだが、12時を回ったくらいでホテルへ戻ったので、朝は9時ごろ目が醒めた。シャワーを浴びて着替え、みんなはどうしたかな、と思いつつ嫁さんとホテルの外へ出てみる。さすが沖縄、もう11月で午前中だというのに直射日光を浴びると、いったん本土で秋の空気を吸った肌には刺さるような感じすらする。
ちょうど通りをはさんでホテルの向かいで物産展兼即売会をやっていたので出発前に少しのぞいた。物産展とは言っても沖縄県内の物産展である。島ごとに特色があるんだなーと感心させられるが、なんで県内の特産品を集めているのかな、とも思った。
今回泊まっているホテルのある地域は那覇市の中でも新都心といわれる新しく開発された地域なので、自分たちのような県外からの旅行者に向けて企画されたんだろうか。
ヤギのヨーグルトを買ってみた。牧場の人だというオジイとオバアは「容器には150ccと書いてあるけど180ccは入れてあるよー」とニコニコしている。これぞ沖縄。プレーンと加糖のドリンクタイプ2種類を買ったのだけれど、加糖されたやつは飲みやすかったものの、プレーンタイプはほとんど柔らかいチーズ、しかも知っている人はわかるであろう強烈な羊臭。その濃厚な味わいには思わず笑ってしまった。
これ、飲めない人もいるだろうなあ。逆さにしてもなかなか落ちてこないし。
あと島の名前を忘れてしまったが、「島そば」というか、沖縄そばのなかでもその土地の出店がうまそうだった。さすがに朝は胃が受け付けなかったので見送ったが、沖縄そばにはやはりハマる。個人的には他の麺類は一日に二回食べたいと思わないが、沖縄そばなら食べられると思う。

10時にチェックアウトし、荷物をホテルにおいてまたまた国際通りへ移動する。移動のぎりぎりまで遊ぼうという魂胆、まだ遊び足りないトランキル一行なのだ。
おみやげなどを各自探すなかで以前から嫁さんと沖縄に来たときは必ず寄っている「久高民藝店」へ行く。琉球ガラスや陶器その他民芸品が豊富で、本当に見飽きない。しかし一緒にのぞきに来たデグチさんはおいら達以上に気に入ってしまったらしい。全然出てこなくなった。デグチさんをおいて残りの全員は先に公設市場へ移動してしまったのだが、それでも来ない。デグチさんの、気に入ったものに対する集中ぶりを見た気がした。
さて公設市場では市場の二階にある食堂でご飯を食べるのが大きな目的だったのだが、みやげものを見ている段階でやはり時間を使った結果、逆算するとあまり余裕のある時間ではなくなってしまっていた。しかし誰一人ご飯を食べるのは後にしようと言い出さず、ついにはタカツカさんのように「中身汁」(早い話が豚モツの煮込みスープ)を頼むという冒険にでるメンバーも。でもあまりの強烈さにやっぱり最後は残していた。…と思ったら、残飯禁止委員長カマチョが速攻で平らげていたのであった。

ホテルへ戻る頃は1分を争う状態。荷物を受け取り、待たせたタクシーに駅のエスカレータまで急行してもらって、時間に間に合うぎりぎりのモノレールに乗る。間に合ってよかったと全員でほっと胸をなでおろす。モノレールのホームで電車に乗るだけで盛り上がっていたのは変だったかもしれないと後で思う。
石垣までは1時間弱のフライト。あっという間過ぎる。時間の余裕があったら船もいいのかも。個人的には二回目の石垣だが、空港の施設が比較的以前の状態のままだったので懐かしい。少し雨が降っているなか、さとうきびの穂が見える風景の中を、バスで港のほうへ向かう。


民宿「石垣島」に到着。泊まらせていただく民宿「楽天屋」とは隣同士の敷地なのだが、「楽天屋」のご主人akeyboさんのお母さんが「石垣島」経営者という関係なのだそうだ。
「石垣島」は古くから石垣で一番格式が高い民宿とのことだが、瓦ぶきの立派な建物で、見るからにそういう風格だ。とりあえず広い「石垣島」の玄関から入ってすぐの居間に上がりこみ荷物を置かせてもらってしばらく待っていると、やがてakeyboさんが現れた。
akeyboさんは長身にボサボサの髪と髭と彫りの深い顔立ちの年齢・国籍・経歴不明といったいでたちで、インパクト大。話せば落ち着いた声でこれまたなんとなく哲学的な雰囲気がただよう人だ。座安さんに引き続き、またまた濃いひとに出会ってしまった感がある。
以前からakeyboさんと交流のあったカマチョ、タカツカさんが旧交をあたためているのを聞いていたが、ネットで日ごろからやりとりしていると、こうして実際に会ったときに話がはずむものなんだなと感じる。自分は仕事でパソコンを使う時期が長かった分、音楽をやりはじめてからむしろパソコンやネットを遠ざける傾向にあったが、こうやって日本じゅうの話の合う人と交流できるのはすごいことだといまさら実感した。


荷物を置いてさっそくセッティングに向かう。考えたら今晩ライヴなのだ。すっかり観光気分になっていて、なんだが現実味がない。
会場のライヴハウス「すけあくろ」は市場前の通り沿い、通りから少し奥まった入り口から入った地下のお店だ。バースペースから少し階段で降りたところに客席とステージがある。席数は40席くらい、立ち見を入れたら60人近くは入る。予想したより広くてうれしいけれども、果たしてどのくらい埋まるかな、という気もした。
マスターに挨拶してセッティングしていく。ドラムセットはジャズセット位の大きさだったので、スネアはお店のものを使うことにした。限りなく中音(メンバー同士が聞いている音のバランス)がそのまま客席に伝わる、あまり作りこまない感じがやはり沖縄ぽい。昨日の野外よりはこういったライヴハウスのほうが慣れているせいか、少し落ち着くものだと感じる。壁にはジャズやボサノヴァのレコードジャケットがいっぱい。それだけを見てもマスターは生音が好きな人なんだな、と思った。


軽めの夕飯を済ませて「すけあくろ」に戻ると、すでにかなり人が集まっていた。ビデオのセッティングをしたら、もう開演時間だった。
akeyboさんのバンド、「ケミカルパパ」の演奏がスタート。ヴォーカルのマー坊さんの歌がはじまると一気に関西のライヴハウスの雰囲気になる。そう思っていたら、アキーボさんが歌いだすと一転してバンドの印象が混沌としてくる。そのへんが良い感じ。akeyboさん達は5曲くらいで、あっという間にトランキルの出番になった。
例によって一度退場する。小声で「オスッ」と声を掛け合うのがトランキルの儀式なのだ。さあ、出囃子をかけて登場だ。

曲順は同じなのだが、ライヴが始まってすぐは正直言って個人的にはノレなかった。
今考えると昨日のセカンドステージで少しテンションが下がってしまった部分からうまく気分を転換できないでいたのかもしれない。しかし、この夜はお客さんの声援が素晴らしく、それにだいぶ助けられた。
カマチョの友人で石垣在住の中澤夫妻をはじめ、トランキルの訪問を待って集まってくれた人達のエネルギーがすごかった。それを身近に感じ、時間が経つにつれていつの間にか自分のエネルギーも上がってきた感じだった。ライヴ終盤ではカマチョも客席とコール&レスポンスの関係ができていて、何もかもスムーズに流れていた。その中で「got to tell you」が流れ、トランキルのライヴ本編は終わった。大きな拍手が気持ちいい。

ここで今回トランキルが石垣まで来ることが出来た恩人でもあるakeyboさんとセッションをしよう、ということになった。トランキルはずっと過去を辿れば必ずライヴごとにセッションをしていて、昔はむしろセッションやアクシデントを楽しむようなステージをしていたものだが、最近はきっちりバンドアレンジで楽曲を仕上げてきているので、こういうのは久しぶりだ。カマチョのギターをakeyboさんが弾き始め、カマチョはピアニカに持ち換える。ファンク調の出だし。カマチョの歌うアドリブに対して、akeyboさんも応え、盛り上がっていく。ふたりともさすが言葉の人でセッションながらGOODなフレーズがバンバン出てくる。クライマックスはakeyboさんの壮絶かつ独特なラップ(早詠い?)これはすごかった。まさにハイライトにふさわしい内容となった。

ライヴ後はそのままお店の閉店まで飲みながら、来てくれた人々と延々会話する。途中占い師に憑依された参加者もあらわれ、いろいろな人の前世があかされたが、残念ながらよく覚えていない。散々飲み食いしたのに、ケミカルパパのボーカル、マー坊さんがやっている京風うどんのお店に移動してまた飲んだ。akeyboさんの爆笑トークが止まらない。深夜放送みたいになっている。みんなアンテナの近くに居すぎて、電磁波にやられてしまったみたいだ。おかしくて腹も顔も痛い。こんなに笑ったのは久しぶりだ。それでも三時を回ってタカツカさんと宿へ引き上げるが、カマチョとakeyboさんは兄弟みたいになってまだゲラゲラやっていた。タカツカさんが、いったんお店を出たあと忘れ物に気づき、取りに戻ったが、「帰って来れないかも…」と真顔で言っていたのがおかしかった。雨でぐちゃぐちゃになった粘土質の道をぺたぺたと歩いて楽天屋まで帰った。石垣の夜は長い。まだそこここに人の影がある。部屋に戻ったらあっという間に熟睡した。気持ちよかった。

文責:かつお@Drums

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